自然の力や四季の美しさを想う日本人の心から生まれた様式美
平安時代以降、花といえば桜を意味するようになり、現在では日本の国花にも指定されています。四季のある日本では春を愛でる気持ちも強く、桜の持つ神聖な美に喜びやあはれを感じ、模様も年代を問わず愛されています。
とんぼは「あきつ」ともいわれ、日本の古称である「あきつしま」に通じます。中世には武士の間で「勝虫(かつむし)」とも呼ばれたことからとんぼ模様は武具や装束に多用されました。
同心円の一部が扇状に重なり合った幾何学的な連続模様で、大海原を意味し、無限の海の広がりを表す図柄です。海がもたらす幸福を呼び起こす吉祥模様として能装束や着物・帯等に多く使用されています。
古来より神が宿る山として信仰されてきた 富士山。日本人にとって愛着や畏敬の念を寄せる特別な存在です。印傳屋はその高嶺を眺めながら甲州の地で歩んできました。日により季節により美しく豊かな表情を見せる姿を、鹿革と漆の色の取りあわせで表現しました。
「万葉集」に多く詠まれた梅の花は平安時代まで花の象徴とされていました。「歳寒三友」と称されたことや厳しい冬から春を迎える喜びを反映した吉祥の模様として用いられてきました。
印伝の模様には植物の模様が多く、中でも花の模様は古くから用いられています。他の模様と組み合わせによって吉祥的な意味合いを持たせる例も見られます。花弁を意匠化した模様は可愛らしさが好まれ、年代を問わず親しまれています。
四季を愛でる日本では花の模様は好まれ、古くから様々な工芸に取り入れられました。長寿や繁栄を象徴する唐草との組み合わせにより、華やかさが一層深まっています。
「菊水」(きくすい)を飲むと長寿を保つという中国の故事から、菊は不老長寿の象徴とされ、菊慈童の物語も伝えられています。日本では「齢草」(よわいくざ)の異名を持ち、瑞祥や高貴さを表す模様として知られています。唐草は生命力が強く、広がりをみせる様子から繁栄を象徴とする模様として様々なモチーフに用いられてきました。変わり菊唐草は長寿や繁栄を願う吉祥模様です。
蔓や葉・実等が絡み合って伸びている様子を図案化した唐草模様には様々な組み合わせが見られます。爪には身を守る等の意味もあり、装飾的な面白さと吉祥の意味を持つ模様として用いられています。
健胃薬として用いられたことや「尚武」「勝負」に音が通じることから、疫病を防ぎ、邪気を払ういわれが生まれ、古くから武具等に模様として多用されました。
四季のある日本では春を愛でる気持ちも強く、桜の持つ神聖な美に喜びやあはれを感じ、桜の模様も愛されてきました。菖蒲との組み合わせにより、吉祥の意味を高めています。
菊を浸した水「菊水」を飲むと長寿を保つという中国の故事等から不老長生の象徴となり、日本でも齢草の異名があります。瑞祥や富貴を表す模様として皇族に用いられ、多種多様な菊の模様が生み出されました。
菊を浸した水「菊水」を飲むと長寿を保つという中国の故事から不老長生の象徴となり、日本でも齢草の異名があります。印伝では花弁を図案化したものや唐草との組み合わせ模様が多く見られます。
菊を浸した水「菊水」を飲むと長寿を保つという中国の故事から不老長生の象徴となり、日本でも齢草の異名があります。瑞祥や富貴を表す模様として皇族に用いられ、多種多様な菊の模様が生み出されました。
椿の木は強く、神事にも用いられたことから神聖な木として尊ばれてきました。また、凜とした佇まいを見せる椿の花は、厳しい冬に春の訪れを感じさせる茶花としても親しまれてきました。印傳屋の椿は古くからある品種の五弁花をアレンジし、和の風情と可愛らしさを表現しています。
古より松は日本人の生活環境の一部として身近な存在であり、四季の移り変わりに伴う変化の中で唯一変わらぬものとして強い印象を与えてきた植物です。社木として豪族の象徴としたり墓に植えて祖先を敬慕するしるしとしました。
地中海沿岸では豊穣を表わす聖なる樹とされ、模様として多用され、日本には奈良時代にもたらされました。写実的に描かれた他、りすや唐草等と組み合わせた模様が多く見られます。
瓢箪は「ひさご」とも称し、古くは酒や水を入れる器として使用されました。鈴生りに実を付ける様子に豊穣の祈りを込め、奇抜な形を図案化したものが家紋や装束に用いられました。豊臣秀吉の馬標で知られる千成ひょうたんも繁栄や出世を願う模様として好まれています。
蔓や葉、実等が絡み合って伸びている様子を図案化したもので、忍冬・葡萄・蓮華等、多種多様な葉唐草がつくられてきました。葉の生命力の強さ、無限に広がる姿は長寿や繁栄を象徴しています。
魚の鱗をかたどり、三角形の頂点を合わせて積み重ね、地と模様を交互に組み合わせた模様です。武士の陣羽織や装束に用いられました。鱗で身を守ることから後に厄除けの意味で用いられるようにもなりました。
中国思想の四神の一つである「玄武」が由来とされ、亀の甲を図案化した六角形やそれを組み合わせた模様を指します。平安・鎌倉時代より厄を祓い身を守る吉祥模様として、装束や調度品、武具等に用いられました。
黒と白の方形を碁盤の目のように交互に並べた模様で「石畳」ともよばれています。江戸中期の歌舞伎役者・佐野川市松が舞台で用いた装束の模様から広まりました。印傳の市松模様は独自に構成をした創作模様もあります。
吉祥・万徳の印である卍の形をくずして連ねた模様です。近世初頭に中国からもたらされた紗綾とよばれる絹織物の地模様に用いられ、名が付けられました。服飾の他、建築物の装飾等に多用されました。
七宝とは金・銀・瑠璃・玻璃・しゃこ・珊瑚・瑪瑙の七つの宝物のこと。円を重ねて生まれる楕円が四方に繋がっていく模様は円満、ご縁などを表す縁起のよい吉祥模様で、家紋などに多用されました。大小七宝は大きさの異なる七宝を組み合わせ、変化を持たせた連続模様です。
網代は細く削った檜皮、竹、葦などを交差 して編んだもので、垣根や屏風、輿、笠な どに用いられました。その様子を象った模 様も網代と呼ばれ、織物などに多用されま した。古くから好まれた網代模様は、簡素 な構成でありながらも変化によって新たな バリエーションが生まれ、現代的な美しさを呈しています。
光沢のある色鮮やかな羽は古来より身分の高さや高潔さを表す象徴として、また害虫や毒蛇を食べることから益鳥として尊ばれ、仏教では孔雀明王として信仰されていました。新しい出会いをもたらすとも言われる孔雀。その神秘の力を秘めた羽を連続模様に仕上げたものです。
鹿は世界各地の山野に生息し、古くから俊敏などの象徴として模様に用いられてきました。印傳屋の鹿は壮快に疾走する姿と、そのまわりに印傳屋の屋号である “ヤマイン” の「印」の字を図案化したものを配し、連続模様を構成しています。
古くから知られる角繋ぎと七宝繋ぎの模様をアレンジした円文の連続による創作模様です。輪の形は絶え間ない繋がりを連想させ、その連なりによって平和と円満が無限に続くようにとの願いが込められています。
格子とは線が碁盤の目のように直角に配した模様で、染織工芸などに多く見られます。格子の組み合わせ方もさまざまで、中にさまざまな模様を組み込んだものもつくられました。花格子は単純な格子の模様に小花を組み合わせた創作模様です。
日本原産のサクラソウ科の落葉宿根草。春まだ浅い時期に雪を割るような姿で表れるため、このような名がついています。一輪一輪の可憐な花の美しさもさることながら、色とりどりの群生の素晴らしさに目を奪われます。引き立てながら調和しあう美しさが模様にも表れています。
雨に濡れたあじさいは鮮やかな色を放ち、梅雨時の沈みがちな心を潤してくれます。あじさいの語源は「藍色が集まったもの」 を意味する「あづさい」(集真藍)とする説があるようです。また花の色がよく変わることから「七変化」「八仙花」とも呼ばれています。
ギリシア語の「kosmos」(美しさ、調和、宇宙など)に由来し、化粧品「cosmetics」も 同じ語源です。メキシコ原産でヨーロッパから明治期に伝わったとされています。秋 の野原を鮮やかなピンクで彩る様は、まるで桜のようなことから「あきざくら」とも呼ばれます。
薔薇は棘のある木の総称で、「いばら」が変化した語とされています。古代種から現在ある原種までさまざまな系統・品種があり、美しい花弁や芳香は多くの人を魅了しています。花言葉は多種ありますが、特に美や愛・喜びの象徴とされてきました。印傳屋の薔薇は花弁と葉を抽象的に表現した模様です。
渦巻や勾玉の形をした模様をさします。模様の起源は植物をかたどった等と定かではありません。更紗模様のひとつとして知られ、異国情緒のある雰囲気の模様として愛されています。
アメリカ原産の青い花ということから、日本ではそう呼ばれました。花つきが良く、茎が地面にはうようにして生長し、毎年きれいな青い花をたくさん咲かせる姿、そして暑さに強く真夏でも開花が鈍らないことから「溢れる思い」という花言葉が伝えられています。
日本には桃山時代以前に渡来し、古くから茶花に使われてきました。花びらが6枚のものは「鉄線」、8枚のものはその花の形から「風車」と呼ばれています。蔓が鉄のように強いということが名の由来で、俳句で「鉄線花」は夏の季語になっています。