一子相伝で受け継がれてきた家伝の秘法
印伝といえば “鹿革に漆” といわれるように、 「漆付け」は最も代表的な技法です。 染め上げた鹿革に手彫りの型紙を置き、 そこに漆を刷り込むことで 模様を浮かび上がらせます。 鹿革と漆の特性を巧みに融合させ、 さまざまな伝統の模様で彩るこの技法こそ、 印伝の魅力を育んできた家伝の技です。
「日本人は藁の煙だけを用いて巧みに着色する」。 信長に謁見したことでも知られる 宣教師ルイス・フロイスが、著書で驚嘆を記した燻べ技法。 鹿革をタイコ(筒)に貼り、藁を焚いていぶした後、 松脂でいぶして自然な色に仕上げる古来の技です。 印伝のルーツともいわれ、印傳屋の遠祖・上原勇七より 代々家長の勇七のみに伝えられてきた技法のひとつ。 熟練の職人だけが駆使できる日本唯一の技を 今も守り続けています。
一色ごとに型紙を変えて、 色を重ねていくことで、 鮮やかな色彩の調和を生みだす更紗技法。 均等に色をのせるには、熟練の職人による 高度な技術と手間を要します。 更紗技法は主に漆付け前の 下地に模様をつける工程に使われます。
印伝はすべて職人による手づくり。 “漆付け三年” といわれるように どの工程をとっても高度な技と 研ぎ澄まされた勘を要します。 印傳屋の熟練の職人たちは 四百年の伝統の技を継承しながら、 時代を見据え、常に新しい印伝づくりに 挑み続けています。