印伝

Life with INDENstory vol.3

古屋 容子Yoko Furuya山梨県山梨市在住
金継ぎし「繕イビト」

山梨県山梨市在住
金継ぎし「繕イビト」

山梨県山梨市在住
金継ぎし「繕イビト」

割れた器に新たな命を
ふきこむ伝統技法。

漆や砥草、小麦粉や米粉など、身近な自然の素材で器をよみがえらせる日本古来の伝統的な技法「金継ぎ」。「一本線が入るだけで、器の表情が変化します。手をかけた分だけ、その価値や時間の重みが器に表れるのがうれしい」と話す古屋容子さんの手には、金継ぎによって再び命を宿した小さな豆皿。偶然に生まれたひびが独特の模様をつくりあげ、そのラインは驚くほどに滑らかで深みのある光沢を帯びています。「こうして器に触れていると、どんどん愛着が湧いてきます」と微笑む古屋さんの眼差しは優しさに満ちていました。

自然の流れに寄り添う 金継ぎの魅力。

10年前、華道の師範をしていた母親の遺品に、割れたり欠けている器を見つけ、大切な器を自身の手で直したいという想いから、金継ぎの世界に足を踏み入れたそうです。山梨で会社員として働きながら、休日には東京の師匠のもとへ通い続け、金継ぎの歴史や技術を知れば知るほど、その奥深さに没頭。「金継ぎは自然の時間。季節ごとに漆の変化を実感し、毎回新しい発見があります。温度や湿度といった人間にコントロールできない自然のリズムがおもしろい。いろいろと考えをめぐらせながら、器に集中している時間が私には必要でした」

直しても使い続ける 日本人の心を伝えたい。

2016年9月に甲府市の中心部にアトリエ「繕イ処」を設け、古屋さんはさらに活動の幅を広げています。「実際に見てもらうことで金継ぎに興味をもってもらい、暮らしの中に取り入れる方が増えてくれたら」と、精力的に講座やワークショップを開催。「今のこの使い捨ての時代に、こだわれるものに出会い、直してでも大切に使い続けたいと思える器があることが幸せ。そんな日本人独特の価値観や金継ぎの歴史と文化を海外にも広めていけたら。そして、いつか母が遺した器を直して、墓前に報告したいですね」

身につけるものには その人自身があらわれる。

伝統文化を継承し、日常生活の中で漆の魅力を実感している古屋さん。社会人になって名刺入れを購入して以来、長年印伝を愛用しています。「普段持つものにはその人自身があらわれると思います」と話す古屋さんの印伝は、紺や黒といったちょっと渋めのアイテム。「印伝は山梨を代表する伝統のブランドだし、このような古典柄を女性が使っているのは珍しいようで、この名刺入れから会話が弾みます。一番いいのは飽きないこと。年齢を重ねても一生使えるもの」また、煎茶道をたしなむようになり、和装にあわせて合切袋も使い始めました。「巾着の粋な感じが好き。すごく存在感があって、着物にこれほど調和するものはなかなかありません。破れるまで使い込みたいです」

古屋 容子Yoko Furuya

山梨県山梨市出身、在住。2007年から蒔絵師である師匠のもとで金継ぎの技術を学び、2013年から本格的に漆での陶磁器の修繕業務を開始し、金継ぎ講座の講師を務めている。

金継ぎ 繕イビト
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