山梨県北杜市在住
農家、富岡農園
自分の「直感力」を信じて、 素直に農業を楽しむ。
心地よいひんやりした空気の中、早朝から畑に立ち汗を流す富岡丈明さん。「今年は梅雨入りしても雨が降らず、乾燥が続いていたので、夏野菜の生育が悪くて…でも、
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農業を軸に、のびやかに 日々の生活を慈しむ。
もともと甲府市の兼業ブドウ農家で生まれ育ち、ずっと農家になりたい気持ちを抱いていたという富岡さん、都内でサラリーマンを経験した後、「農業をやるならここしかない!」と子供の頃から渓流釣りで何度も訪れていた北杜市で独立しました。徐々に畑の面積を増やしながら、自身の栽培法やスタイルを確立、販路も格段に広がりを見せています。その傍ら、生活も子育ても趣味もマイペースでのびのびと楽しんでいる様子。妻の美智子さんと2人の子供たちについては「オアシスのような存在ですね」と嬉しそう。しかし、周辺には後継者不足に悩む高齢の生産者が多いそう。「農業の世界って素晴らしい。だからこそ、農業に従事する大人は誇りを持って取り組むべき。そうすれば地域の子供たちも自信を持って農業の道を選択できるはずだから」
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明確なビジョンを描き、
理想の暮らしを実現していく。
サラリーマン時代に培った経験を活かし、現在もビジョンづくりを欠かしません。将来の自分を想像し、なりたい自分を具体的にイメージして書き留めておくそう。「会社員だった20代の頃、すでに『10年後は会社を辞めて就農し、家族をもって農業で安定した生活を送っている』とイメージしていました。10年経たないうちに実現していましたね。仕事も人生も自分のビジョンを明確にして、少し背伸びするくらいの目標を掲げておくほうがモチベーションが上がり、夢を実現していけるはず」と語ります。また、お互いに刺激を与え合える有機農業仲間の存在も大きい。「年齢や経験に関係なく、対等に付き合えるのは農家だから。お互いを尊重しあえる先輩や仲間がいてくれることは幸せですね」
幼い頃から慣れ親しんだ、 身近な工芸品。
そんな富岡さんがそっと差し出したのは、母親から譲り受けたという甲州印伝の長財布。裏地にも鹿革が使われた贅沢な一品です。「祖母も母親も弟も…家族が印伝を使っていたので、昔からとても身近なものでした。ちょっとお洒落な後輩が持っていたりして、高校生の頃には友達の間で流行っていたんです。実際手にすると肌に馴染む感覚が心地よくて、漆の手触りの良さも感じられました。この質感が好きですね」
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