進化を続ける印傳屋海外シリーズ「INDEN EST. 1582 F/W コレクション 2018」(後編)
甲州から世界へ
印傳屋は、2011年にアメリカのファッション市場への進出を目的としたブランド「INDEN NEW YORK」を発表し、2016年にはブランド名を「INDEN EST.1582」へ改め、イギリス・フランスを中心とした欧州のファッション市場への挑戦を続けてきました。
前編では、「INDEN EST.1582」誕生までのエピソードとコ―テリー展での取り組みをご紹介しました。後編では、今年9月のコ―テリー展で発表し、バイヤーから高い評価を得た「INDEN EST. 1582 F/Wコレクション2018」の特徴と今後の展望をご紹介します。
ニューヨーク・ファッションと伝統の融合
従来の印伝といえば、鹿革の色と漆模様のコントラストを愉しむために「赤革には白漆」など鹿革と漆の色合わせが異なるものが多く、同色の組み合わせは主流ではありませんでした。今では「INDEN EST. 1582」シリーズだけではなく、印傳屋の国内アイテムでも定番となっている「赤革に赤漆」が誕生したのは、実はニューヨーク・マーケットでの経験がヒントになっています。海外では“シック”と表現され好まれる黒に黒、赤に赤という色合わせや、これまでの印伝になかったデザイン性は日本のユーザーにも受け入れてもらえている実感があります。
さらに、日本で流通しているハンドバッグではシルバーの金具やチェーンが主流とされていますが、ニューヨーカーはゴールドを好みます。印伝という素材のポテンシャルだけではなく、ディテールの細部まで気を配る事で、バイヤーの評価を加速度的に高めてきました。
「INDEN EST. 1582」は、スタイリッシュでコンテンポラリーなデザインが求められるニューヨーク・ファッションにおいて、漆ならではの高級感と相まって海外のバイヤーの目には新鮮に映ったようです。
また今作では、日本スタッフ発のアイディアで、クラッチポーチをコレクションへ取り入れました。ポーチは、女性向けの印伝として人気のアイテムの一つです。従来のものより一回り大きくし、アクセントとして目を引くエレガントなフリンジを付けています。また、裏地にもスウェード調の生地を使用し、印伝のやわらかなタッチを存分に活かした仕様となっています。
海外進出で得た知識や、技術を日本のユーザーにもお届けしたいという思いから、3年ほど前よりコレクションの一部を直営店で取り扱うようになりました。その反響は大きく、今まであまり印伝に興味を示さなかった若い方も、新たに関心を持ち始めてくれています。
つづく挑戦の歴史
アメリカ市場で手応えを掴み始めた現在、ヨーロッパやアジア市場への参入も視野に、あらたな挑戦が始まっています。
2016・2017年とパリで開催されている国際的なファッション・アパレルの展示会であるプルミエール・クラス(PREMIERE CLASSE)へ出展しています。また、欧州展開のひとつとして、2017年から英国王室御用達のラグジュアリーブランド、アスプレイ社とのクリエーション・コラボレーションが実現しています。
歴史や伝統を重んじるヨーロッパの人は、中世日本のサムライが身につけていた甲冑が印伝の原点にあるという、その歴史観に深く感銘を受けるようです。印傳屋が400年にわたって守り続けてきた伝統と信頼が、世界でも企業としての強みになると確信し「INDEN NEW YORK」から、創業年を冠した「INDEN EST.1582」へブランド名を改めました。
来年で、海外進出プロジェクトは発足から11年目を迎えます。これまで積み重ねてきたリサーチや創意工夫を以ってしても、まだまだ「世界で認められる印伝」への道半ばにいます。
「INDEN EST.1582」コレクションの開発テーマには、ニューヨーク・ファッションや海外トレンドへ適応することだけではなく、印伝独特の「鹿革に漆」の風合いと、印傳屋の持つ美の世界観をいかに訴求していくのかも加わっています。掴みかけている手応えをより確かな物にするための挑戦は続きます。そして、その経験をもとに日本のユーザーへ革新的な印伝をお届けしていきたいと思います。
▶進化を続ける印傳屋海外シリーズ「INDEN EST. 1582 F/W コレクション 2018」(前編)はこちら
INDEN EST.1582オフィシャルサイト(英字版)は、こちらをご覧ください。
*記事内で紹介した写真に掲載されている商品は、現在国内で販売されていない商品・色柄も含まれております。
*日本国内で販売されているINDEN EST. 1582 コレクションは、印傳屋直営店および印傳屋公式オンラインショップにてご確認いただけます。