印傳屋便り -四月- 「花のある暮らし」
何年、何百年の時を経ても変わることのない季節のめぐり。
四季折々の自然風景と印伝の模様は深く結びついています。私たちは、数百年にわたり自然の移ろいにまなざしを向け、畏怖の念を抱きながら、ここ甲州の地でものづくりを続けています。
花や草木の生命の息吹に耳をすませ、刻々と変わりゆく空模様を眺めるーーそれは、私たちの身近にずっと存在しているものであり、太古より脈々と受け継がれているものだと気付かされます。
四季折々の草花の便りを印傳屋よりお届けいたします。
花を飾る:
チューリップ
「花を飾る」と題した本コラムでは、印傳屋青山店の近くで花屋・VOICEを営む香内斉(こうない・ひとし)さんに自宅で花を楽しむ方法についてお話を伺います。
みずみずしく透け感のある花びらにまっすぐ伸びる若草色の茎。春を連想させる花として誰もが思い浮かべるのがチューリップではないでしょうか。「無垢な白はどんな色にも合うので、その時々の気分によって花瓶を選んでほしいです」と香内さん。今日のように落ち着いたグレーを選ぶと空間がすっとした印象になります。
環境にもよりますが、つぼみの状態で購入すると2週間ほど保つようです。長持ちさせるコツは、毎日水を替えて茎を切ること。チューリップは、切り花でも茎を切ることで少しずつ伸びるのだとか。
光に当たるとつぼみが開き、真っ暗な夜になると閉じるという性質を持つチューリップは、日々刻々と変化する花でもあります。花となって大きく開く姿に力強さも感じるかもしれません。
球根付きの小さなチューリップは、全体が見えるガラス製で浅めのものがおすすめ。「お皿に水を張り、料理を盛り付けるように生けてみるのもステキです」と教えてくださいました。
小さな花々に、想いを託して。
はじまりは、小さな一歩から。
新たな道を歩むあの人に寄せる想いを、模様へ託して。
やがて花開くチューリップを添えて春の門出を祝福しましょう。
「印傳屋便り」は毎月更新するコラムです。
次回もぜひお楽しみに。
協力:VOICE(voice-flower.jp)