-月を見て感じる日本人の心-
日本人の心を照らす中秋の名月
2024年9月17日は旧暦の8月15日、中秋の名月を愉しむ十五夜です。
一年で最も美しい月が見られるこの日、
ゆったりと夜空を見上げ、
心と身体で月を感じるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
この国の人々に受け継がれる、
自然を尊び、愛でる心をいつまでも。
月見の風習は平安時代の頃より始まったとされます。
貴族たちは酒を手に、ある人は想いを寄せる相手を月に思い浮かべて
和歌を詠み、観月の優雅なひとときを愉しみました。
その文化はやがて庶民にも広まっていきますが、
貴人たちが月見を愉しんでいたその時代、
下級の官人たちも、年貢や労役に勤しむ平民たちも、
きっと同じように中秋の名月に見惚れ、
夜空を見上げていたのではないでしょうか。
それは単に、市井の人々の観月に関する文献がないだけのこと。
身分に関わらず、月に寄せる想いは誰の心にもあったはずです。
いにしえより月は人々の暮らしに密接に関わり、
奈良時代から明治時代のはじめまで
月の動きをもとにした暦が使用されていました。
農作物の種まきや収穫も月の満ち欠けを目安とし、
新月や満月に祈りと感謝の心を捧げてきました。
人々の暮らしとともにあった月。
四季の中で月が美しく見える秋、なかでも中秋の十五夜を心待ちにする
月見の文化は、時代とともに受け継がれ今に伝えられています。
名月を愛でる心、自然の神秘の美しさを感じる感性が
いつまでもこの国の人々にあってほしい、そう願うのです。
月見の文化を伝え続けて35年目。
印傳屋は、いにしえの人々が自然に抱く想いからつくり出した模様や古来の革工芸の文化を印伝に取り入れ、今に伝えています。
日本の文化を愛し、受け継ぐ者のつとめとして、仲秋に月見の文化に親しんでいただく呼びかけを1989年から続けています。月見の風習を通じて、自然の美しさや日本人の自然観にあらためて気づいていただきこの国の文化について大切な人と語らいの時を過ごしていただけたら幸いです。
さあ、9月17日。月映えの窓辺のひとときが思い出深いものとなりますように。