煙で色彩と模様を施す
伝統の技法。
燻(ふすべ)とは、太鼓と呼ぶ筒に鹿革を貼り、
藁(わら)を焚いてその煙でいぶし、模様や色をつける古来の技。
いぶす材料や時間、回数により多彩な茶褐色の世界を生み出します。
「日本人は藁の煙だけを用いて巧みに着色する」。
信長に謁見したことでも知られる宣教師ルイス・フロイスも、著書で驚嘆を記したとされています。
その技は、印伝の燻技法として、今に受け継がれています。
いにしえの技は、印伝に。
そして未来へ。
革の染色方法のひとつとして燻の技術が発展したのはおよそ6~7世紀頃。
権力者への貢物として燻を活かした鹿革の装飾品や武具が献上されました。
東大寺所蔵の「葡萄唐草文染韋」を代表とし、
正倉院にも鹿革を燻べた様々な装飾品や美術工芸品が現存しています。
戦国時代になると、しなやかで丈夫なうえ装飾性に富んだ鹿革は
甲冑に用いられ、菖蒲や小桜などの模様を施した染革が好まれました。
南蛮貿易が行われた17世紀には装飾革「インデヤ革」が伝来し、
燻をはじめ和様化した装飾革が広く「いんでん」と呼ばれるようになり、
粋人の暮らしを彩る道具として愛用されました。
その後、近代化や大戦の動乱により日本各地で燻の伝承が途絶えるなか、
印傳屋は「甲州印伝」の伝統とともに、その技を繋ぎ続けています。
燻の模様
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三本縞(さんぼんじま)
糸掛けと呼ぶ技法で作られています。
三本の糸目を一定間隔で配置し防染します。
糸を外すと美しい三本縞が浮かび上がります。 -
交差縞(こうさじま)
糸掛けと呼ぶ技法で作られています。
太さの異なる糸を一定の角度で交叉し、
糸を外すと濃淡のある交叉した縞模様が表れます。 -
とんぼ
型紙による糊置きで作られています。
「勝虫(かつむし)」とも呼ばれ、
縁起を担ぐ模様として武将に好まれた模様です。 -
正平柄(しょうへいがら)
正平6年(1351年)征西将軍懐良親王が
肥後国の革工に命じて染め出した模様です。
燻べた後に漆や更紗染めによって
獅子や牡丹の模様を組み合わせています。 -
御所車(ごしょぐるま)
型紙による糊置きで作られています。
牛車の車輪を図案化したもので
家紋にも用いられています。 -
小桜(こざくら)
平安時代以降、花といえば桜を意味するようになり、
現在では日本の国花にも指定されています。
四季のある日本では春を愛でる気持ちも強く、
桜の持つ神聖な美に喜びやあはれを感じ、
模様も年代を問わず愛されています。 -
古代菖蒲(こだいしょうぶ)
健胃薬として用いられたことや
「尚武」「勝負」に音が通じることから、
疫病を防ぎ、邪気を払ういわれが生まれ、
古くから武具等に模様として多用されました。
商品例
下記の商品例のほか小物・お財布・
袋物・ハンドバッグなど
半年程の製作期間をいただき、
一つひとつ製作しお届けいたします。
燻は、印傳屋の登録商標です。
燻 小銭入85H[古代菖蒲]No.7101
価格14,300円(税込)
燻 合切袋(大)[とんぼ]No.7110
価格69,300円(税込)
燻 F小銭入05[三本縞]No.7121
価格17,600円(税込)
燻 束入C[正平柄]No.7125
価格55,000円(税込)
燻 名刺入[とんぼ]No.7137
価格27,500円(税込)
燻は、印傳屋直営店で誂え品(受注生産)として販売しています。
いにしえの技法ならではの、自然の革の質感を活かした商品のため
漆付技法や更紗技法の印伝とは異なる、
特徴をお確かめのうえお求めください。
- ・燻商品には、稲藁を燻べた強い香りがございます。徐々に薄くなりますが気になる場合は、ご使用いただく前に、風通しの良い場所で陰干しすることでより早く薄めることができます。
- ・天然の鹿革を使用しています。角ズレによる傷やシワ、燻べた際の色ムラなどの自然と生まれる商品の表情を、一枚一枚の革の個性として活かして製作しています。お求めいただいた商品は、同じものが存在しない唯一無二の印伝です。ご愛用いただくなかで、お客様だけの風合いを育てていただけますと幸いです。
- ・表面はスエード革のため、爪などでも容易に傷が付きます。また、長くご使用いただくなかで、擦れなどにより色が薄くなり、革本来の地色に近づいていきます。 そのようなご愛用の証を積み重ねることで燻の独特の風格が備わってまいります。
- ・水分による染みが付きやすく、濡れるとその部分は染みとなり、元に戻すことはできません。
- ・防水スプレーやワックス、染み抜きなどをご使用いただくことはできません。
ご注文・お問い合わせ先
- ■本店
- TEL.055-233-1100
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